“金ヒル スナック恵&ゆき”は、仕事も遊びも常に全力投球、自由奔放で真面目なママ2人で、毎週金曜の午後に営業しています。スナックに集まるお客さんも、皆それぞれの人生を楽しむ達人ばかり。そんな素敵な常連さん達を、ぜひ紹介させてください。
今回のお客様は、大学在学中に着付けの師範を取得し、現在はフリーランスとして国内外できもの体験を伝えている角田はるなさん。恵ママとは独立のタイミングも近く、お互いの知人を紹介し合って交流の輪をさらに広げているんだそう。
「好き」を仕事にしたいという想い、新卒でフリーランスになることを決めた覚悟。やりたいことに素直に、まっすぐに突き進む角田さんにいろいろとお話を伺いました。
祐天寺にある一軒家サロン「なごみハウス」
-現在の活動について教えてください!
和文化体験ができる施設『なごみハウス』の運営と、そこでの着付け教室を主宰しています。“きもの”が好き、という想いが原点で施設を立ち上げましたが、『なごみハウス』では、着付けだけではなく、茶道や書道、お花など10種類以上の伝統文化を楽しめるんです。日本の伝統文化に触れることで、心が豊かになる体験を多くの人にしてもらいたいと思っています。
-はるなさんは、今まできものとどのように関わってきたんでしょうか。
祖母の影響で、小さい頃からきものが好きで。いつからか自然と、将来はきものに関わる仕事がしたいと思っていました。なので大学に進学してから、女子大生と留学生の交流を目的にした着物散策イベントを主宰したり、学生運営のきもの販売店を立ち上げたり、とにかくいろいろと行動していましたね。リユース(中古)きもの専門店と、あつらえの逸品物を扱う呉服屋でアルバイトをして実務経験も積みつつ、並行してダブルスクールで、着付けの師範を取得しました。
ー将来を見据えて、学生の頃から精力的に活動されてきたんですね。そのバイタリティは一体どこから……!?
それまでは、日常生活にきものを取り入れて楽しんでいたんですが、ふと「このままでは、ただの“きもの好き”な女子大生で終わってしまう……」と思ったんです。きものを、単なる趣味で終わらせたくないなと。好きなものは、とことん突き詰めたいという性格なんですよね。そういえば、在学中には服飾の専門学校に入学してファッションビジネスも学んでいたので、ダブルスクールではなくトリプルスクールでしたね(笑)。
-単なる「好き」では終わらせたくない、という気持ちがエネルギーになったのですね。それにしても、はるなさんの行動力に脱帽です!
-「きものに関わる仕事がしたい」と、情熱を持って充実した大学生活を過ごしたはるなさん。実際に、仕事をするためにどう行動したんでしょうか?
大学3年生の終わりに、いよいよ就職活動の時期になってどうしようかなと。当初、「将来は自分できもののお店を持ちたい」と考えていました。なので、アルバイト先のリユース着物販売店を運営している社長さんに相談してみたんです。そしたら、「うちの会社で運営してる店舗はフランチャイズ制度があるから、入社して2年後にでも自分のお店を出したらいいよ」と言ってもらえて。トントン拍子に内定をいただくことができました。
-すごい、今までの努力が実ったんですね!
ただ、入社するまでの間にインターンで店舗に立たせてもらったんですけど……「あ、違うな」と思って、2ヵ月後に内定を辞退しました。
-えっ!? せっかくのチャンスを……。
きものを「売る」ことではなくて、きものを見たときの高揚感だとか、袖を通したときの気持ちが華やぐようなときめき。そういう体験を「伝える」ことが、私のやりたいことだったんだって気づいたんです。
そんな私にとって、店舗で扱っている限られた商品だけをお勧めすることは、少し違和感がありました。それに、お店で待っているだけでは、元々きものに興味を持っている人にしか来てもらえない。それよりも、「きものっていいよね」と思ってくれる人を1人でも多く増やしたい、きものの魅力をもっと広く伝えられるような仕事がしたいと、はっきり自覚したんです。それで、フリーランスで活動することに決めました。
-周りの同級生は、一般企業に就職した方が多かったと思います。新卒直後からフリーランスとして活動することに不安はなかったですか?
不安が全くなかったと言えば、嘘になります。でも、大学時代には生活費とトリプルスクールの学費をまかなうために、きものの販売スタッフをはじめ、銀座のクラブでも働いていて、それなりに収入を得ることができていました。その経験があったので、「なんとかなるはず」と思えたんですよね。
-企業に就職してお給料をもらう以外にも、生活していく手段はあるだろうと。
そうですね。根底に「自立」があったからこそ、選択できた道かもしれません。最悪うまくいかなくても、田舎に帰ってアルバイトをしながら、また機会を伺えばいいだろうと。
-自立した生活が送れている自信があった一方で、失敗してしまったときのことも考えていたんですね。
はい。でも思ったんですよ、「失敗って、なにを持って失敗なのか?」と。名の知れた企業に入るとか、すごい肩書きを得るとか、お給料をたくさんもらうとか……そういうのって全部、人からよく見られたいという見栄なんじゃないかって。
人目を気にしてしまうと、世間的に成功とされている価値観から外れたときに、自分のことをみじめに感じるかもしれない。でも、結局は自分がどう思うか次第。自分の心が豊かであれば、それだけでじゅうぶん満足に暮らしていけるなって思ったんです。なので、自分の好きなことをやれるフリーランスの道を選んでよかったですね。
-ついつい人目を気にしたり、見栄を張ったりしてしまいがちですが、本当にすべて自分次第ですよね。はるなさんの言葉にとっても勇気をもらえます。
-フリーランスとして社会人生活を歩み始めたはるなさん。恵ママや昼スナとの出会いはその頃ですか?
はい、フリーランスになりたてのタイミングでした。恵さんとは、とある大規模なビジネスパーティーに参加したのが出会いのきっかけです。その頃はまだ『なごみハウス』を運営する前で、出張で着付け教室をしていまして。それを伝えたら、「ちょうど着付けを習いたかったので、お願いしたい」と言ってくれたんです。
-おお、恵ママが着付け教室の生徒さんになったんですね。(恵ママのフットワークの軽さも素晴らしい……)
実は、それまでは知人の紹介など、すでにつながりのある方へのレッスンしかしたことがなかったので、恵さんは「共通のお知り合いがいない」初めてのお客様だったんですよ。
-それはとっても緊張しそうですね。どうでしたか?
緊張しましたね……。でも、おかげ様ですごく勉強になりました。着付けはマンツーマンレッスンなので、講師と相性が合わなかったら、きものも好きになってもらえないかもしれない。お互いゼロの関係性から、失礼のないようにどうコミュニケーションをとっていくべきか、“仕事として”お客様と向き合えた最初の一歩になりました。
昼スナOPENの日にも着物で駆けつけてくれたはるなさん
-初めてのお客様になった恵ママとの出会いは、さぞかし印象深かったでしょうね。それがきっかけで、昼スナにも行かれるようになったんですか?
はい、恵さんが昼スナをオープンしたときに、顔を出させてもらいました。
-昼スナに行ってみた感想を教えてください。
まず、普段では全く知り合えないような人との交流があるのがいいですね。私は仕事柄、自営業やフリーランスの方と関わる機会が多かったのですが、昼スナではワーキングマザーや、会社員の方も多くて。人生の先輩である女性たちから、仕事と育児の両立、企業でのキャリアの積み方について伺えるのはすごく刺激になりました。
-さまざまなお仕事をされている方と、普段の行動範囲を超えて交流できるのが昼スナの魅力なんですね。素敵なつながりは生まれましたか?
はい。現在『なごみハウス』で水引の先生をしてもらっている方は、恵さんがつないでくれたんです。ご紹介していただいて本当に感謝しています。
-お仕事にもつながる出会いがあったんですね。さすが昼スナ!
-はるなさんの今年の目標はなんですか?
きものを通じて、世界の人たちにも日本の文化や国そのものへの興味を持ってもらうきっかけをつくっていきたいですね。
-世界を視野に入れているのですね……!
はい。もともと新卒でフリーランスになった直後は、銀座のマンションの一室で、プライベートサロンを1人でやっていて。それが、続けるうちにさまざまな日本文化の先生と知り合えて、『なごみハウス』を立ち上げ、今では9名の素晴らしい先生方と一緒に活動できています。また、日本文化を伝える活動家の1人として、世界中から集まった経営者の方々と交流する機会をいただくこともできました。きものという文化は、人と人をつなぐことのできる魅力を持っているんだと実感しましたね。
海外の方には、きものの美しさをきっかけに、日本にもっと興味を持ってもらいたい。日本の方には、「日本文化って素敵だよね」と自国のことをもっと誇ってもらえるように。そして、日本文化を通じて違う国の人たちと友好的な関係を築いていくことができたらと思っています。
まずは今月、インドへ渡って現地の大学生向けに浴衣体験チャリティーを行う予定です。インドの学生さんって、日本文化にとても興味を持ってくれている人が多いんですよ。日本とインドの友好関係に少しでも貢献できれば、と真剣な想いで準備を進めています。現地の方と交流できるのが今から楽しみですね。
学生の頃から「きもの一筋」で突き進んできたはるなさんの視野は今、世界へと広がっています。はるなさんなら持ち前の行動力と情熱で、きっと世界と日本をつなぐ架け橋になってくれるはず。そんな確信を人にもたらしてくれる、まっすぐな眼差しが印象的でした。これからのはるなさんの活動にぜひご注目ください!
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